この記事を読めば農林水産省が発表した令和6年度のデータをもとに、農作物に甚大な被害をもたらす害獣のランキングとそれぞれの特徴・被害実態がまるごとわかります。
「最近、うちの畑が荒らされているけど、どの動物の仕業なんだろう?」
「そもそも日本で一番被害額が大きい害獣って何?」
そんなふうに気になっている農家の方や農地を持つご家族の方に向けて書きました。農林水産省のデータを参考にしています。
日本の害獣被害、実は深刻です
農作物全体への野生鳥獣による被害規模をまず知っておいてほしいんです。
令和6年度(2024年度)の全国データによると、野生鳥獣による農作物の被害金額は合計187億5,300万円にのぼっています。
前年度(令和5年度)の163億5,500万円と比べると、1年間で約23億9,800万円も増加した計算になるんですよね。被害面積も4万4,300ヘクタール、被害量は73万1,400トンとどの指標でも悪化傾向が続いています。
「農業をやっていない自分には関係ない話」
と思ってしまいがちですがこれだけ被害が拡大すると農産物の価格にも影響してきますし、地域の農業が衰退すれば食料安全保障にも関わってくると考えると、なかなか他人事ではないと感じます。
以下、参考にしているのは農林水産省のデータを元に執筆しています。
出典:https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/hogai_zyoukyou/index.html
農作物害獣ランキング【獣類TOP10】
農林水産省が全国の都道府県から集計した令和6年度のデータをもとに、被害金額で順位をつけています。この数字、思っていた以上に差がありました。
第1位 シカ(78億5,100万円)
ダントツの1位はシカです。前年度の69億5,400万円からさらに8億9,600万円増加していて、増え方が本当に止まらない印象です。
被害面積も3万5,300ヘクタールと獣類の中では群を抜いて広い範囲に影響が出ています。
シカは草食性なので牧草・野菜・果樹・水稲・麦類など、ほぼあらゆる農作物が標的になります。
しかも群れで動くので一晩で広大な農地が被害にあうことも珍しくないんです。
個人的にはこれが1位というのは「納得感が強い」と感じました。
第2位 イノシシ(44億5,600万円)
シカに次いで2位がイノシシで被害金額は44億5,600万円。
前年度の36億3,400万円から約8億2,100万円増えており、こちらも増加傾向が続いています。
イノシシは農作物を食べるだけでなく土を鼻でえぐり返す「掘り起こし行動」をするため、食べられた量以上に農地がダメージを受けるのが厄介なポイントです。
最近はドローンやICTセンサーを使った対策技術も出てきているとのことで、農業分野のテクノロジー活用という観点でもイノシシ対策は注目されています。
第3位 クマ(5億1,900万円)
3位はクマ(5億1,900万円)で前年度の7億3,800万円から減少しているのがやや意外でした。
ただし被害量でみると32,900トンとシカに次ぐ水準なので、「単価の安い農作物」を多く食べているケースが多いのかもしれません。
クマは身体能力が高く、防護柵を超えてくることもあるので対策の難しさは別格です。
第4位 サル(7億7,000万円)
実は被害金額ではサルがクマを上回って4位となっています(7億7,000万円)。
サルは知能が高いので防護ネットの外し方を学習して侵入したり、人間が田畑にいる昼間でも出没したりと、なかなか手強い相手です。
被害量は前年度比でも増加しています。
第5位 アライグマ(6億9,300万円)
外来種の中で最も被害が大きいのがアライグマです。
令和5年度の4億8,200万円から6億9,300万円へと、前年度比44%増という急増ぶりには正直驚きました。
もともと北アメリカ原産のアライグマは日本に天敵がほとんどおらず、繁殖力が高いことが被害拡大の背景にあります。
農作物だけでなく住宅への侵入被害も問題になっています。
第6位 ハクビシン(4億7,800万円)
ハクビシンも令和5年度の3億6,500万円から4億7,800万円へと増加しています。
木登りが得意なため、果樹園への被害が特に多いとされていて、果物農家の方には頭の痛い存在です。
アライグマと同様に外来種であり、鳥獣保護管理法のもとで許可なく捕獲できないので個人での対処が難しい点も厄介なんですよね。
第7位 タヌキ(1億5,900万円)
タヌキの被害金額は1億5,900万円で前年度からわずかに増加。
夜行性で農地に侵入し、スイカや果物を食べることが知られています。「かわいい」イメージがありますが農家にとっては立派な害獣です。
第8位 ウサギ(1億3,400万円)
ウサギの被害は前年度の9,900万円から1億3,400万円へと増加しています。
特に葉物野菜や麦類の芽を食害するケースが多く、積雪地帯では冬から春先にかけて被害が集中する傾向があります。
第9位 カモシカ(7,000万円)
カモシカの被害は7,000万円で前年度から若干減少しています。
山間部の農地や植林地への被害が中心で地域によっては深刻な問題になっています。
第10位 ヌートリア(7,900万円)
ヌートリアは外来種のネズミに似た大型の水棲動物で被害金額は7,900万円と前年度の5,000万円から増加傾向にあります。
水田や水辺の農地に被害が集中していて、近畿・中国・四国地方での出没報告が多いとされています。
農作物害獣ランキング【鳥類TOP7】
第1位 カラス(13億6,400万円)
鳥類の中で圧倒的トップがカラスで被害金額は13億6,400万円です。
鳥類全体の被害金額31億2,600万円のうち40%以上をカラス1種が占めている計算になります。
スイカやトウモロコシをつついて食べる被害が有名で学習能力が高いため追い払いがとにかく難しいんです。
第2位 ヒヨドリ(8億600万円)
ヒヨドリは前年度の3億3,300万円から令和6年度に8億600万円へと約2.4倍に急増。
これが今年の鳥類データで一番驚いた部分でした。
宮崎県や長崎県でもキャベツ・ホウレンソウなどへの被害増加が報告されています。
第3位 カモ(3億5,100万円)
カモの被害金額は3億5,100万円で前年度からわずかに減少しています。
水田の稲穂を食べる被害が中心で、渡り鳥のため季節的に被害が集中しやすい特徴があります。
第4位 ムクドリ(1億8,500万円)
ムクドリの被害金額は1億8,500万円で、前年度とほぼ同水準です。
果実や穀物を食べる被害が中心で、大群で飛来するため被害範囲が広がりやすい点が農家にとって悩ましいところです。
第5位 スズメ(1億6,200万円)
スズメは稲の収穫期に大群で飛来して穂を食べる「スズメ害」として昔から農家を悩ませてきた存在で被害金額は1億6,200万円。
前年度の1億7,700万円からはわずかに減少しています。
第6位 ハト(8,000万円)
ハトの被害金額は8,000万円で前年度の8,900万円からやや減少しています。豆類や穀物への被害が多く、農地周辺への定着が問題になるケースがあります。
第7位 その他鳥類(1億7,800万円)
キジやサギなどが含まれる「その他鳥類」の合計は1億7,800万円。
サギは水田でドジョウや小魚を食べる一方、稲株を踏み倒す被害も報告されています。
被害金額ランキング一覧表(令和6年度)
農林水産省の令和6年度データをまとめると、こんな感じになります。
| 順位 | 動物名 | 被害金額(百万円) | 前年度比 |
|---|---|---|---|
| 1 | シカ | 7,851 | +896 |
| 2 | イノシシ | 4,456 | +821 |
| 3 | カラス(鳥) | 1,364 | +23 |
| 4 | サル | 770 | +66 |
| 5 | クマ | 519 | ▲219 |
| 6 | アライグマ | 693 | +210 |
| 7 | ハクビシン | 478 | +113 |
| 8 | ヒヨドリ(鳥) | 806 | +473 |
| 9 | タヌキ | 159 | +14 |
| 10 | ウサギ | 134 | +35 |
注目すべき部分
アライグマ・ハクビシンの外来種問題
このランキングを見て個人的に一番気になったの、外来種であるアライグマとハクビシンの被害急増です。
アライグマの被害金額は令和6年度に6億9,300万円と前年度から約44%増、ハクビシンも同様に増加傾向が続いています。
鳥獣保護管理法の枠組みの中で許可なく捕獲・駆除ができないので個人農家の対応には限界があり、自治体レベルの防除計画が重要になってくる背景があります。
シカ被害は歯止めなき拡大
シカの被害面積は令和6年度で3万5,300ヘクタールにのぼり、前年度比で5,900ヘクタールも拡大しています。
地球温暖化による生息域の北上や山間部の過疎化・耕作放棄地の増加が「シカにとって快適な環境」を作り出しているとも言われていて簡単には解決できない構造的な問題が背景にあるんですよね。
ヒヨドリ急増は「想定外」の害鳥
鳥類の中でヒヨドリの被害が前年度から約2.4倍に急増したことは令和6年度データで最も驚くべき変化のひとつだと感じています。
ヒヨドリはこれまで「庭にやってくる鳥」というイメージが強かっただけに、農業被害の文脈での存在感が急速に増しているのは業界関係者の間でも注目されているのかもしれません。
まとめ
- 被害金額1位はシカ(78億5,100万円)で2位イノシシ(44億5,600万円)に大差をつけているほか、年々増加傾向が続いている
- 外来種のアライグマは前年度比+44%増と急増しており、今後さらに被害が拡大する可能性がある
- 鳥類ではカラスが1位だが、令和6年度はヒヨドリが前年度から約2.4倍に急増したことが注目ポイント
- 全体の被害金額合計は187億5,300万円で前年度比+23億9,800万円と深刻化が続いている
- データは農林水産省「全国の野生鳥獣による農作物被害状況(令和6年度)」に基づいており、各都道府県からの報告を集計したもの
🌿 農地を守るためにはどの害獣がどのくらいの被害をもたらしているのかを正確に把握することが肝心です。このランキングが、対策を考えるきっかけになれば嬉しいですね。
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