絶滅危惧種の害獣はいる?日本の野生動物が抱える複雑な現実

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この記事を読めば「害獣」と「絶滅危惧種」という一見矛盾するように見える関係性の実態がわかります。

農作物を荒らすクマやシカが「増えすぎた害獣」として扱われている一方で、同じ種が地域によっては絶滅寸前という状況がじつは日本各地で起きていて。

この複雑な現実を環境省のデータや専門家の見解をもとに整理していきます。

目次

「害獣」と「絶滅危惧種」は矛盾しない

「害獣が絶滅危惧種になるなんてあり得るの?」

と思う方も多いと思いますがこれは普通に起こりえることなんです。

同じ種でも地域ごとに個体数が大きく違っていてある県では「増えすぎて困る」のに、別の県では「絶滅寸前」という状況が同時に存在しています。

害獣という定義そのものがグレーゾーン

「害獣」とは法律上の正式な定義ではなく人間の農作物・家屋・身体に被害を与える野生動物を指す通称です。

ニホンジカ、イノシシ、ニホンザル、クマ、アライグマ、ハクビシンなどがその代表格とされています。

ただ、「害獣かどうか」は人間側の都合で決まるものなので、同じ動物でも出没場所や個体数によって全然違う扱いになります。

生態系の中での役割を考えると単純に「悪い動物」とも言い切れない。なんか、一方的なレッテルだなと感じることもあります。

個体数と地域によって状況は真逆になる

環境省のデータによれば日本には絶滅のおそれがある野生動物が存在する一方で、生息数を増やして生息域を拡大している野生動物も存在するという状況が同時に進んでいます。

要するに、「増えすぎ問題」と「絶滅問題」は別の種の話だけじゃなく、同じ種の「地域差」として現れることがあるということです。こ

れを知らないまま

「クマを駆除しよう」
「クマを守ろう」

という議論をしてもなかなかかみ合わないわけです。

ツキノワグマ 「害獣化」と「絶滅危惧」が共存する典型例

ツキノワグマの話はこの問題の象徴として外せないと思っています。

同じ「ツキノワグマ」という種なのに地域によって「指定管理鳥獣(駆除強化対象)」と「絶滅寸前」が並立しています。

本州・北海道では「害獣」として管理強化

2023年のクマ類による人身被害は198件(被害者219人、死亡者6人)と記録的な数字になりました。

これを受けて環境省は2024年4月に鳥獣保護管理法の省令を改正。

四国の個体群を除くクマ類を「指定管理鳥獣」に指定して捕獲・駆除対策が強化されることになりました。

指定管理鳥獣とは環境大臣が「集中的かつ広域的に管理が必要」と判断した種です。

すでにニホンジカとイノシシが指定されていましたがそこにクマ類が加わったことで、本州や北海道では積極的な個体数管理が進められています。

四国のツキノワグマは絶滅寸前

ところが同じツキノワグマでも四国の個体群は「絶滅寸前」として、今回の指定管理鳥獣の対象から明確に除外されました。

四国では1986年以降に狩猟禁止措置がとられているにもかかわらず分布の拡大がほとんど見られていません。

WWFジャパンもツキノワグマについてIUCNのレッドリストでは「危急種(VU)」に位置づけられていて、環境省のレッドリストでも四国や紀伊半島の個体群を「絶滅の危機にある個体群」として認定していると説明しています。

同じ種なのに一方では「もっと捕れ」、もう一方では「これ以上捕るな」という正反対の政策が走っている。

この現実は肌感で言うと、多くの人にとってかなり衝撃的な事実じゃないかと思います。

ニホンジカとニホンザル 増えすぎた経緯と保護の歴史

シカやサルはいまや農村部で深刻な被害をもたらしている代表的な害獣ですが、じつはかつて「絶滅寸前」として保護されていた歴史があります。

かつては絶滅危機、保護政策で回復したが…

戦後の大規模な開発や乱獲によって、ニホンザルは絶滅寸前まで個体数が落ち込み、保護政策が取られた時期がありました。

その後、個体数が回復した一方で農村部の人口減少が重なり、サルが集落に出没して農業被害をもたらすようになったわけです。

ニホンジカも同様で将来の生息数を試算したデータでは、2013年度の対策のままでは2023年には生息数が約1.5倍まで増加するという結果が出ていました。

そのため環境省と農林水産省は「10年後までに半減」を目標に掲げ、集中捕獲キャンペーンを展開してきました。

シカの「増えすぎ」が生態系を壊している

ニホンジカによる被害は農作物だけにとどまらないんですよね。

高山帯にまで現れるようになったニホンジカがお花畑や希少な植物を食べつくし、美しい景観が失われ、斜面崩壊につながることまで懸念されています。

害獣問題は「農家の被害」だけで語るのは不十分で生態系全体への影響という視点も必要です。

シカが増えすぎることで別の絶滅危惧種の植物が消える。という連鎖も起きています。

アライグマやハクビシン 外来種害獣は絶滅危惧種とは別の話

アライグマやハクビシンは「害獣」として語られますが、こちらは絶滅危惧種の話とは少し問題が違います。むしろ、これらが在来の絶滅危惧種を脅かしている側です。

アライグマは特定外来生物として規制対象

アライグマは1960年代にペットとして輸入された個体が逃げ出したり放出されたりして野生化。

現在は北海道から沖縄まで分布が拡大しています。

「外来生物法」によって特定外来生物に指定されていて輸入・飼育・移動などが禁止されています。

日本にはアライグマの天敵となるコヨーテやオオヤマネコがいないため、個体数の増加が止まりにくい状況があります。

それだけじゃなく、在来種であるニホンアナグマやタヌキの生息地を奪う競合問題も起きています。

ハクビシンは外来種だけど法的位置づけは異なる

ハクビシンはアライグマと混同されがちですが、「特定外来生物」には指定されていません。

被害対策は主に鳥獣保護管理法の枠組みで管理されており、捕獲には原則として許可が必要です。

こうした外来種害獣の問題が在来の希少種にとっての脅威になっているという側面は意外と語られないですよね。

ざっくりした感じで言うと、「害獣を放置する=在来の絶滅危惧種を見殺しにする」という構図も成立します。

絶滅危惧種の指定基準 「害獣」でも指定されうる条件

日本の絶滅危惧種はIUCNのレッドリストと環境省のレッドリストの2つの基準で評価されています。

これらの基準上、害獣として扱われる動物でも条件次第で絶滅危惧種に指定されることがあります。

IUCNと環境省のカテゴリー

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絶滅リスクIUCN(国際)環境省(日本)
絶滅危険度・極めて高いCR(Critically Endangered)絶滅危惧IA類
絶滅危険度・高いEN(Endangered)絶滅危惧IB類
絶滅危険度・中VU(Vulnerable)絶滅危惧II類

ツキノワグマ(四国・紀伊半島個体群)はこの枠組みで「絶滅の危機にある個体群」として認定されています。

WWFジャパンのレッドリスト更新情報(2025年時点)では、IUCNのレッドリストに登録された絶滅危惧種の数は4万8,000種以上に上っています。

「種の保存法」が保護の根拠になる

環境省レッドリストの絶滅危惧I類・II類に該当する種は、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)」の枠組みで保護されます。

生息地等保護区の指定、取引規制、保護増殖の3つが主な柱です。

この法律の存在によってたとえ農業被害をもたらしている動物であっても、絶滅危惧種に指定されていれば保護が優先されるというケースも出てきます。

四国のクマが指定管理鳥獣から除外されたのもこの考え方が背景にあります。

まとめ 「害獣」と「絶滅危惧種」の両立という現実

  • 同じ種でも地域によって「害獣」と「絶滅危惧種」が共存する(ツキノワグマが典型例)
  • ニホンザル・ニホンジカはかつて絶滅危機だったが保護政策後に急増して害獣化した経緯がある
  • 四国のツキノワグマは2024年の法改正でも指定管理鳥獣から除外され、絶滅保護が継続されている
  • アライグマ・ハクビシンなど外来種害獣はむしろ在来の絶滅危惧種を脅かす加害者側に回っている
  • IUCNと環境省の両レッドリストが指定基準となり、「種の保存法」が保護の法的根拠になる
  • 害獣対策と希少種保護は対立するのではなく、地域ごとの個体数データに基づいたバランスが必要

野生動物との共存を考えるとき

「増えすぎた=悪い」
「絶滅しそう=守るべき」

という単純な二項対立では現実に対応できません。

地域の生態系を長期的な視点で見ていく姿勢が害獣問題と絶滅危惧種保護の両方に向き合ううえで、たぶん一番大切なんだと思っています。

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