この記事を読めばアライグマの行動範囲の広さと季節や性別による変化、そして「なぜ家に来るのか」の理由まで丸ごとわかります。
最近、夜中に屋根裏から音がしたり、畑が荒らされていたりして「もしかしてアライグマ?」と思っている方、けっこう多いんじゃないでしょうか。
実際、環境省の調査では2010〜2017年の間に分布域が約10年前と比べて全国で3倍近くに広がっているんです。
被害を防ぐにはまずアライグマの「動き方」を知ることが大事だと思っていて、それがこの記事の目的です。
アライグマの行動範囲、実際どのくらい広い?
アライグマが「どこからうちに来るのか」を知るにはまず基本的な行動圏の広さを押さえておく必要があります。
一般的な行動圏の広さ
アライグマの行動圏は環境によってかなり変わります。
一般的には40〜100ha(ヘクタール)程度とされていて、これはだいたい東京ドーム約8〜20個分の面積に相当します。
生息環境の違いによって最小3ha(都市部のメス)から最大5,000ha(草原のオス)まで幅があると報告されていて、その差は本当に驚くほど大きいんですよね。
日本語のWikipediaでは「行動圏は基本的に直径1〜3キロメートルの範囲」と記されていて、郊外では広く都市部では狭くなる傾向があります。
一晩で数キロメートルを移動することもあるので、「数軒先の農家から来た」というのが十分あり得る話なんです。
個体によって100か所以上の巣を持つことも
行動圏が広いだけじゃなく複数のねぐらを使い分けるというのもアライグマの特徴です。
個体によっては600ha(1辺が約2.4kmの正方形)の行動圏の中に100か所以上の巣を持つこともあると報告されています。
要するに「ここが本拠地」という固定の巣穴に頼らず、状況に応じてねぐらを変えていくんですね。
屋根裏に居ついたと思ったら別の場所に移動し、また戻ってくる…という繰り返しが起こりやすいのはこういった習性があるからかもしれません。
オスとメスで全然違う行動圏の広さ
「うちの近所でよく見かけるアライグマ、オスかメスかどっちだろう」
と思ったことはありませんか?
実は性別によって行動圏の広さはかなり異なります。
オスの行動圏は広く排他的
オスのアライグマはメスよりもずっと広い行動圏を持ちます。
しかも排他的(テリトリー的)な性格があるので他のオスとは行動圏を重ねません。
佐賀県の資料によればオスの行動圏の中に複数のメスの行動圏が含まれるという構造になっていて、いくつかの「家族ゾーン」をまとめてカバーするイメージです。
アメリカのノースダコタ州での研究では草原地帯のオスの行動圏が7〜50km²にも及ぶことが報告されています。これは少し極端な例ではあるものの、オスの移動能力の高さを示していると思います。
メスの行動圏は子育てで大きく変わる
メスの行動圏は通常オスより狭めですが、子育て中は劇的に縮小します。
普段は直径2km程度を動き回るところが、授乳期間中は巣を中心に半径100メートル以内に行動が限定されるとされています。
都市部のメスに関しては人工的な餌場(ゴミ置き場など)が近くにあると行動圏がわずか3〜40ha程度になることもあります。
餌が近くにあればわざわざ遠出しなくていいので、それはそうですよねという感じ。
環境で変わる 都市と農村での行動の違い
「田舎でも都会でもアライグマは見かける」
という話をよく耳にするんですけど、実は環境によって行動パターンはかなり変わります。
都市部では行動圏が狭くなる
ゴミ捨て場や公園など、餌になるものが集中している都市部ではアライグマはわざわざ広範囲を移動しなくても生きていけます。
そのため、都市部の行動圏は農村部より明らかに小さくなる傾向があります。
アメリカの研究によると都市部の行動圏は郊外・農村部の行動圏(71.2〜182.4ha)と比べて、都市部では25.2〜52.8ha程度と半分以下になるとも報告されています。
ただ、行動圏が狭い=密度が高い、ということでもあって小さなエリアに多くの個体が集中するので被害の頻度は下がらないかもしれません。
個人的にはこれが都市部での被害が深刻になりやすい理由の一つかなと感じています。
参考:Trash Talking: Anthropogenic Resources Facilitate Raccoon Interactions in Urban Environments
農村、郊外では広範囲を動き回る
農村や自然環境では餌が分散しているので一晩で数キロメートルを移動します。
特に水辺(河川・ため池周辺)を好む習性があるので、川沿いの農地が被害を受けやすい傾向があります。
季節で変わるアライグマの動き方
アライグマの行動範囲は季節によっても大きく変わります。「なぜこの時期だけ頻繁に出る?」という疑問への答えがここにあります。
春(3月〜5月) オスが広範囲を移動する季節
春は繁殖期にあたり、オスがメスを求めて普段より広い範囲を動き回ります。
この時期はオスの移動距離が特に長くなるので普段は来なかった場所にも現れることがあります。
メスは逆に巣を作ってねぐらに定着する時期でもあります。
夏(6月〜8月) 子どもが独立して分散する季節
梅雨明けから真夏にかけて育った子アライグマが親元を離れて独立します。
この時期は未経験の若い個体が各地に分散するため、目撃件数が増えるんです。
若いアライグマは経験不足で警戒心も薄いため、農地やベランダに臆せず近づいてくることが多いみたいです。
秋(9月〜11月) 最も行動範囲が拡大する危険な時期
秋は冬に向けて体内に脂肪を蓄える「食欲の季節」であり、エサを求めた行動範囲が最も広くなります。
木の実や熟した果実を求めて農地に積極的に侵入したり、家庭菜園を荒らしたりする頻度も上がります。
被害報告が増えるのもこの時期が多い印象です。
冬(12月〜2月) 半休眠状態で行動範囲は縮小
真冬になると気温の低下に伴い、アライグマは体温と代謝を下げた休眠状態に近い状態になります。
とはいえ、クマのような完全な冬眠ではなく気温が上がったり空腹になったりすると活動を再開します。
冬だからといって完全に安心できないのが少し厄介なところですよね。
なぜ家の近くまで来るの?行動範囲が住宅地と重なる理由
「うちは山の近くじゃないのに、なぜアライグマが?」
と不思議に思っている方も多いと思います。
餌が引き寄せる「餌場密度」の問題
アライグマの行動範囲は餌の豊富さに大きく左右されます。
家庭菜園やゴミ置き場、ペットのエサの食べ残しなどはアライグマにとっては格好の餌場です。
「餌があるところまで来ている」のではなく、「餌があるからその場所に居座るようになった」というほうが正確かもしれません。
一度餌場を覚えると繰り返しやってくるので最初の1回を防ぐことが大切です。
木登りと水泳で行動範囲を広げる
アライグマは木登りと泳ぎが得意なのでフェンスや塀があっても乗り越えたり、水路を渡って移動したりすることができます。
「囲ってあるから大丈夫」
と思っていると、思わぬ経路から侵入されることがあります。
また、2007年の環境省調査では1,388メッシュで確認されていたのに対し、2017年には3,862メッシュまで増加していて、日本全体での分布域の拡大ペースが速いことも分布範囲の広さと関係しています。
まとめ
- アライグマの行動圏は一般的に40〜100ha程度で一晩で数キロメートルを移動することもある
- オスは排他的な広い行動圏を持ち、複数のメスの行動圏をカバーする構造
- 子育て中のメスは巣から半径100m以内に行動を絞り込む
- 都市部では行動圏が縮小して密度は逆に高くなりやすい
- 秋が最も行動範囲が広くなる危険な時期で被害報告も増える
- 餌があれば定着し、複数のねぐらを使い回す習性から一度来たら繰り返し来訪しやすい
- 2010〜2017年で分布域が全国で約3倍に拡大していて都市近郊でも遭遇リスクは高まっています
「足音がする」
「ゴミが荒らされた」
「庭の野菜が噛まれた」
などの兆候がある場合は早めに専門業者や自治体の相談窓口に問い合わせてみることをおすすめします。
行動範囲が広いアライグマは放置するほど定着リスクが上がる動物です。


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