この記事を読めばコウモリにまつわることわざや迷信が日本、中国、西洋でどう違うのか、そしてなぜ「縁起がいい」と「不吉」の両方に語られるのかが丸ごとわかります。
コウモリってなんか不気味なイメージがありますよね。
夕暮れにひらひらと飛んでいる姿を見て
「うわ、コウモリだ…」
とちょっとぞわっとした経験のある方、けっこう多いんじゃないかと思います。
でも実はコウモリは文化や時代によってまったく逆の意味を持つ、かなり面白い存在なんです。
ことわざや迷信を深掘りしていくと意外な歴史や文化の違いが見えてきます。
コウモリのことわざ一覧
コウモリは日本語のことわざの中で、主に「あいまいな立場」や「実力の差」を表す存在として登場します。
ここでは代表的なことわざをひとつずつ丁寧に見ていきましょう。
鳥なき里の蝙蝠(とりなきさとのこうもり)
日本でコウモリにまつわるもっとも有名なことわざといえば、これを挙げる人が多いんじゃないでしょうか。
「優れた者や強い者がいない場所で、たいしたことのない者がわが物顔で威張っている」
という意味のことわざです。
その由来として昔の人はコウモリが夜しか飛ばない理由を「昼間は鳥が邪魔をするから」だと思っていたとも言われています。
鳥のいない環境に限ってようやくコウモリが羽を広げて活動できる。そういうイメージから生まれた言葉ですね。
この表現の初出は意外と古くて、鎌倉時代の1283年に書かれた仏教説話集『沙石集』にすでに登場しているんです。
という記述があり、かなり長い歴史を持つことわざだということがわかります。
戦国時代には織田信長が四国を平定した大名・長宗我部元親に対して皮肉を込めてこの言葉を使ったという逸話も残っています。
という意味合いだったとされていますね。
歴史上の人物のエピソードに登場するくらい、昔からこの表現は広く使われていたんだなと個人的にはちょっと感動しました。
蝙蝠も鳥のうち(こうもりもとりのうち)
こちらも面白いことわざです。
二つの意味があって、ひとつは
もうひとつは
という意味です。
コウモリは空を飛ぶけれど鳥ではなく哺乳類。
それでも「飛ぶ」という点では鳥と似ている──そのあいまいな性質がこの表現の根っこにあるんでしょうね。
コウモリのような存在 「二枚舌」のイメージ
ことわざとは少し違いますがコウモリには「どっちつかず」「節操がない」というイメージも昔から語られてきました。
沖縄に伝わる民話では
という話があり、どちらにも属せる自分の性質を使って立ち回るずる賢い動物として描かれています。
これは日本だけじゃなく世界中の民話にも共通するテーマで、「ひきょうなこうもり」という童話も同じ構造を持っています。
この「どっちにも転べる生き物」というイメージ、日本の「コウモリ外交」という言葉にも通じますよね。
外交用語でも使われるくらい、この印象は根強いです。
日本のコウモリの迷信は縁起がいい?悪い?
じつは日本ではコウモリは不吉な動物というよりも縁起のいい動物として語られてきた側面のほうが強いんです。
これ、意外と知らない人も多くてちょっと驚きませんか?
「幸守り」「幸盛り」という当て字
コウモリを漢字で書くと「蝙蝠」ですが日本では昔から「幸守り(こうもり)」や「幸盛り(こうもり)」という当て字が使われてきた時期がありました。
読み方が同じで字面から「幸せを守る」「幸せが盛り上がる」といった意味に転じたわけです。
だから「コウモリが家に入ってくるのは幸せが訪れるサイン」という言い伝えが生まれたんですね。
家に住み着くと縁起がいい、は本当?
風水の観点でもコウモリは「豊かな富の象徴」とされていて、家に巣を作ると幸福の前触れと語られてきました。
特に5匹のコウモリが家に来ると最上級の幸運とされていて功名や福寿、結婚や金運、健康の五つに恵まれると言われています。
ただ、これはあくまで迷信的な言い伝えの話で現代では屋根裏に住み着かれると糞害や悪臭などの被害が深刻になることもあるので鵜呑みにするのは難しいところです…。
コウモリを夢で見ると不吉?
ちょっと面白いのが、「現実では縁起がいい」とされているコウモリも夢に出てきた場合は不吉な暗示になる、という言い伝えがあることです。
病気になったり、信用していた人に裏切られたりする予兆とされる場合もあるとか。
現実と夢でまったく意味が逆転するというのがコウモリの「どっちつかず」な性格を象徴しているようで、なんか面白いな、と思います。

中国のコウモリ信仰 福を呼ぶ聖なる存在
中国でのコウモリの立ち位置は日本よりもはるかに積極的な「福の象徴」です。
「蝠」と「福」は同じ音
中国語でコウモリは「蝙蝠(biānfú)」。
この「蝠(fú)」の発音が幸福を意味する「福(fú)」と完全に同じなんです。
だから「コウモリ=福を運んでくる動物」という発想が自然に生まれました。
この文化はかなり古くて14世紀ごろからコウモリの絵や装飾が縁起物として使われていたとされています。
明・清時代の陶磁器、皇帝の衣装、家具、髪飾りにいたるまでコウモリ文様は日本人の感覚からするとびっくりするくらいあらゆるものに描かれています。
五匹のコウモリ=五福
中国では特に「五匹のコウモリ」が一緒に描かれた絵や装飾は「五福(ごふく)」を表すとされています。
五福とは長寿、富、健康、徳、安らかな最期という五つの幸せのこと。
中国の一般家庭には「五福和合」という飾り物を置く習慣があり、コウモリはその象徴として定着しています。
コウモリのイメージって東洋と西洋でこんなにも違うんですね。
日本人からすると「怖い生き物」の印象が強くてもその文化的背景を知ると見え方がガラッと変わります。
韓国でもコウモリは縁起物
あまり知られていませんが韓国でもコウモリは縁起のよい動物とされています。
韓国の伝統的なパッチワーク布芸「ポジャギ」にもコウモリ文様が使われていて、理由は中国と同じで「蝙蝠の蝠」が「福(韓国語でポク)」と読めるから。
また、コウモリが多産であることから子宝を願う意味もあったとされています。
西洋のコウモリ迷信 魔女、悪魔と死の象徴
西洋文化でのコウモリのイメージはほぼ正反対といっていいくらい暗いです。
シェイクスピアの魔女とコウモリ
シェイクスピアの『マクベス』では魔女たちが魔法の鍋で何かを煮るシーンがあり、その材料のひとつとして「Wool of bat(コウモリの毛)」が登場します。
14世紀のフランスでは家の周囲にコウモリが多いという理由だけで火あぶりにされた女性がいたという記録まで残っているんです。
これはかなり衝撃的な話ですよね。
それだけコウモリへの恐怖が根深かったということでしょう。
洞窟=冥界、コウモリ=死者の使い
西洋では洞窟が「冥界への入り口」と信じられていた文化が多く、洞窟に住むコウモリは自然と「冥界や死者と結びついた存在」とみなされるようになりました。
黄昏時に洞窟から飛び出してくる姿が、昼でも夜でもない「あいまいな時間」に現れる不気味な生き物というイメージを強めたんでしょうね。
コウモリが家の中にいると「誰かが死ぬ」という言い伝えはアメリカやヨーロッパの各地に今でも残っているとされています。
マヤ文明のコウモリ神
おもしろいことにヨーロッパとは違うアメリカ大陸の文明、マヤ文明でもコウモリは「地下の冥界を象徴する存在」として、地域全体で崇拝されていました。
「崇拝」と「忌避」は違いますが「暗闇の支配者」という捉え方は世界の複数の文化で共通しているのが興味深いところです。
文化によってこんなに違う!コウモリの意味まとめ
| 文化圏 | コウモリのイメージ | 主な根拠・背景 |
|---|---|---|
| 日本 | 縁起がよい(幸守り) | 「幸守り」「幸盛り」の当て字 |
| 中国 | 最高の縁起物(福の象徴) | 「蝠」と「福」が同音 |
| 韓国 | 縁起がよい・子宝の象徴 | 「蝠」が「福」と同じ音、多産 |
| 西洋・ヨーロッパ | 不吉・魔女の使い | 夜行性・洞窟・冥界のイメージ |
| マヤ文明 | 冥界の支配者として崇拝 | 洞窟=地下世界との結びつき |
「どっちつかず」こそがコウモリの本質
ことわざでも「鳥なき里の蝙蝠」「蝙蝠も鳥のうち」とどちらにもすっきり分類できない存在として描かれ、迷信でも縁起がいいと不吉の両方に語られるコウモリ。
これって実はコウモリの生物学的な性質そのものを反映していると思うんです。
哺乳類なのに翼を持ち、夜に活動し、昼でも夜でもない黄昏時に飛ぶ自分でも、そういうふうに感じます。
どのカテゴリにも完全には属さないあいまいさが文化によって「吉」にも「凶」にも転じたんじゃないかなと。
これはあくまで私の考えですけどね。
日本でコウモリが西洋風の「不吉な存在」として認識されるようになったのは、ラキュラなどのホラー文化が広まった近代以降の影響が大きいと言われています。
もともとの日本の感覚ではコウモリはわりと「幸せを運ぶ生き物」だったんですね。
まとめ
- 「鳥なき里の蝙蝠」は1283年の文献にも登場する古いことわざで、「優れた者がいないところで凡庸な者が威張る」という意味
- 「蝙蝠も鳥のうち」はまらない者が優れた者の中に交じることや、頼りなくても仲間という意味
- 日本では「幸守り、幸盛り」という当て字から縁起のよい動物とされてきた
- 中国や韓国では「蝠=福」という発音の共通から最上級の縁起物として扱われてきた
- 中国では五匹のコウモリが「五福」を表すとされ、工芸品や建築装飾に多く使われた
- 西洋では魔女や冥界、死の象徴として忌み嫌われてきた
- 現代の日本で不吉なイメージが広まったのは西洋ホラー文化の影響が大きいと考えられている
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