この記事を読めばコウモリが持つ知能や特殊能力の全貌がわかります。
「コウモリって、ただ暗いところを飛び回るだけの生き物でしょ?」
と思っていたとしたら、かなり損してるかもしれません。
実は2024年に発表された研究によってコウモリが人間だけが持つと考えられてきた認知能力を持っていることが科学的に示されたんです。
エコーロケーションだけじゃない驚くべき頭の使い方をじっくり見ていきましょう。
コウモリの「頭のよさ」は本物だった
コウモリに関するイメージって害獣とか夜行性とか、あまりポジティブなものじゃない人も多いですよね。
でも認知能力という観点で見るとこれが意外と…というか思いのほかすごいんです。
エピソード記憶で「未来の行動」を計画している
2024年6月、イスラエルのテルアビブ大学のヨッシ・ヨベル教授らの研究チームが衝撃的な成果を発表しました。
エジプトルーセットオオコウモリが「エピソード的記憶(episodic-like memory)」を活用して行動計画を立てていることが確認されたんです。
エピソード記憶っていうのは「あのとき、あの場所で、こんなことがあった」という個人的な体験の記憶のこと。
これを使って将来の行動に生かす能力は長らく人間だけのものだと考えられてきました。
研究チームがエジプトルーセットオオコウモリ15頭をGPSで追跡したところ、空腹のコウモリは水分豊富な実のなる木へ、すでにエサを食べたコウモリはタンパク質豊富な実のなる木へ、それぞれ直接飛行する傾向が確認されました。
しかもそのとき、昨日訪れたばかりの良い木でさえも通り過ぎることがあったそうで…要するに「今の自分に何が必要か」を把握したうえで最適な選択をしているわけです。
出典:
https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(24)00689-4
https://phys.org/news/2024-07-wild-high-cognitive-abilities-previously.html
「先送り」もできる 遅延報酬の選択
コウモリが示したもう一つの高度な認知能力として遅延報酬の選択(delayed gratification)があります。
これはいわゆる「我慢して後でもっと良いものを得る」という判断で衝動的な行動を抑制できることを意味します。
自分の見立てではこのレベルの意思決定ができる動物って、チンパンジーや一部の鳥類くらいだと思っていたんですが…コウモリもそこに加わるとは正直驚きでした。
エコーロケーションという「音のGPS」
コウモリの能力を語るうえで欠かせないのが、エコーロケーション(反響定位)です。
これはコウモリ研究のメインテーマで世界中の研究者が今も解明を続けています。
超音波で「見る」仕組み
コウモリは鼻または口から超音波パルスを発射し、その反響音(エコー)を両耳で受信、分析することで周囲の空間を把握します。
この「送信1つ・受信2つ」というシンプルな構成ながら障害物にぶつかることなく微小な昆虫を高速かつ連続で捕食できるほどの精度を誇っています。
広島大学の研究ではコウモリが超音波から把握している空間の構造が実際の空間に対応していることも確認されています。
ちなみにコウモリの脳は多くが重さ1g以下と極めて小さいにもかかわらず、そのパターン認識の能力はいろいろな点で最新のレーダーより優れているとも言われています。
環境に合わせてパルスを調整する柔軟性
コウモリのエコーロケーションは「一律の超音波を出しているだけ」ではありません。
飛行環境や目的に応じてパルスの時間周波数構造や音圧、放射時間間隔などを柔軟に調整しています。
たとえば開けた場所では長距離対応のパルスを茂みの中では短距離で高解像度のパルスを使うといった具合に。
これは状況に応じた「センシング戦略」とも言えます。
こういうの、なんか普通に賢い生き物だなと思いますよね。
「盗聴」と「妨害」という戦略的コミュニケーション
さらにおもしろいのがコウモリが仲間の超音波を「盗聴」して情報を利用することがあるという話。
ヤマコウモリの研究では仲間の声を聞くことで新しいねぐらの探索時間が約半減したと報告されています。
一方でメキシコ・オヒキコウモリは獲物を競う際に仲間のエコーロケーションを意図的に妨害する音波を発することが確認されています。
この「音響妨害」は成功率ほぼ100%という驚異的な数字で、エコーロケーション・コミュニケーションに次ぐ「第3の超音波機能」として注目されています。
出典:https://www.science.org/doi/abs/10.1126/science.1259512
「天然のGPS」とも呼ばれる空間記憶
過去や現在、未来の位置を同時に認識
2021年にサイエンス誌に掲載された研究ではコウモリの脳の海馬にある「場所細胞」が、現在の位置だけでなく過去と未来の位置情報まで処理していることが明らかになりました。
好きにランダムで飛行していても目的地へ向かう飛行でも、コウモリは環境と移動経路の両方について詳細な空間記憶を維持しているとのこと。
しかも「自分が未来にいるはずの位置」についての空間認識まで持っているというのはなかなか衝撃的です。
出典:https://www.science.org/doi/10.1126/science.abg1278
4年間保持できる長期記憶
コウモリの記憶力を象徴する研究としてカエルクイコウモリが電話の着信音とエサを関連づけた記憶を最長4年間維持できることを示した研究があります。
オハイオ州立大学の研究チームは、「二度と聞かない可能性のある音を4年も覚えているのは非常に長い期間だ」とコメントしています。
出典:https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(22)00790-4
ねぐらを見つけるときの「階層的認知」
コウモリがねぐらを探す際は
①連合学習
②空間記憶
③社会的情報の盗聴
という3つの認知プロセスを状況に応じて優先順位をつけながら使い分けていることも分かっています。
新しい場所では連合学習を一度確認した安全なねぐらを再発見するときは空間記憶を優先する、という柔軟な切り替えです。
コウモリの社会性と仲間との関係
多様なコミュニケーション手段
コウモリは超音波以外にも仲間を呼んだり交流したりする「ソーシャルコール」を持っています。
接触が近づくと視覚的な合図や体臭も組み合わせてコミュニケーションを取るようです。
ちなみに哺乳類全体の約5分の1の種数をコウモリが占めていて、生態学的にも非常に多様なグループ。
社会構造も種によってかなり違い、コロニー(群れ)での生活を基本としながら個体間の関係は思った以上に複雑なんですよね。
「後天的スキル」として認知能力を獲得
前述のエピソード記憶についてはこれが後天的なスキルであることも研究で示されています。
生まれつき備わっているのではなく、経験を重ねることで獲得・強化される能力とされています。
これはある意味、学習する能力を持っているということでもあります。
コウモリの脳から人間が学べること
「天然のGPS脳」が神経科学の研究対象に
コウモリの脳神経の仕組みは人間の認知科学や神経科学の研究にも応用できるとして注目されています。
特にナビゲーション(空間認識)に関わる脳の仕組みは、アルツハイマー病などの空間認識障害の研究にも示唆を与えうるとされています。
個人的にコウモリの脳研究ってかなりアツいジャンルだと思っています。
小さな脳で複雑な処理をこなす仕組みが解明されればAIの設計にも影響しそうだなという気も、まあ素人考えですが。
体の小ささと知能の関係
コウモリの脳は多くの種で1g以下と非常に小さい。
それでもここまでの認知能力を発揮できる理由は脳の特定領域。とくに音の処理や海馬などが極端に発達しているためです。
体と脳の比率(脳化指数)という観点ではコウモリは必ずしも高くないものの、その機能的な特化がすさまじい効率を生んでいるとも言えます。
まとめ
- エピソード記憶と将来計画
エジプトルーセットオオコウモリが過去の体験をもとに未来の行動を計画することが2024年のテルアビブ大学研究で確認された - 遅延報酬の選択
衝動的な行動を抑え、より良い報酬を待つ判断ができることも示されている - エコーロケーション
超音波パルスとその反響音を分析して空間を把握する能力は最新レーダーをも超えるとされる - 場所細胞による時空間認識
海馬の場所細胞が過去や現在、未来の位置を処理している - 4年以上の長期記憶
カエルクイコウモリは訓練で覚えた音を最長4年間記憶できる - 階層的な認知プロセス
状況に応じて連合学習や空間記憶、社会的情報を使い分ける - 音響妨害という第3の超音波機能
仲間のエコーロケーションを妨害する戦略的行動も確認されている
「コウモリ=暗い場所を飛ぶだけの動物」というイメージはもう古い。
コウモリは小さな体に詰め込まれた思った以上に洗練された知能を持った生き物でしたね。

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